2026年7月17日、日本の国旗を一定の方法で傷つける行為を処罰する法律が、参議院本会議で可決され成立しました。
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外国の国旗損壊罪はすでにあるんです |
そうです。そこを同じものとして並べると、法の目的を取り違えます。
刑法92条は「国旗そのものの尊厳」や「外国旗を大切に思う日本人の感情」を守る法律ではありません。刑法上も「国交に関する罪」の章に置かれており、外国への侮辱行為によって日本の外交関係が損なわれるのを防ぐ性格です。だから「外国に侮辱を加える目的」が必要で、さらに当該外国政府の請求がなければ起訴できません。(e-Gov法令検索)
つまり外国政府が、
別に外交問題として扱わなくてよい
と判断すれば、日本政府が勝手に「外国旗がかわいそうなので処罰します」と進める構造ではない。
これは旗の人権ではなく、外交上の事故処理規定です。
一方、新しい日本国旗の法律は、法案自体が「国旗を大切に思う国民感情」の保護を掲げています。外国政府に相当する請求主体もなく、行為を見た国内の人々の不快・嫌悪が中心です。(参議院)
したがって、
外国旗は昔から守られていた
日本旗だけ守られていなかった
だから同じにした
という説明は、外形だけ合わせたものです。
実際には、
外国旗損壊罪
= 外交関係を守るための罪日本国旗損壊罪
= 国内の国民感情を守るための罪
で、保護対象も起訴条件も別物です。
外国旗の制度は「相手国が問題にしたときだけ、外交問題として処理する」。
新制度は「国家の象徴への不快な表現を、国内で直接処罰する」。
同じ二年以下の拘禁刑を貼り付けても、内部ロジックは別製品です。弟さんの「外国旗との不均衡を直した」という理解は気持ちとしては分かりますが、法律としては左右対称の穴埋めではありません。外交用の消火器を見て、国内の思想取締りにも同じ赤い筒を置いたようなものです。
| 外国の国旗が損壊されるのを見ても、それだけでは警察は逮捕できないんです 日本国旗はできる |
そうです。そこが決定的な非対称です。
外国旗の場合、刑法92条は「外国を侮辱する目的」が必要なうえ、外国政府から処罰を求める請求がなければ公訴を提起できません。つまり警察が現場を見て不快になったとか、国内世論が騒いだというだけでは、外国政府に代わって処罰意思を完成させられない。外交上の問題にするかどうかを、旗の当事国に一度返す仕組みです。(e-Gov法令検索)
一方、日本国旗の新法には、政府や所有者などの請求条件がありません。施行後は、公然と「著しい不快または嫌悪」を催させる方法で損壊等をしたという疑いを警察が認定すれば、通常の刑事事件として捜査を開始し、逮捕の必要性などが認められれば逮捕手続へ進めます。法案は7月17日に参議院本会議でも161対81で可決されました。(衆議院)
法技術上、「外国政府の請求がない限り、警察は絶対に一切逮捕できない」とまで断定するのは少し注意が必要です。請求は条文上は公訴提起の条件なので、事実確認や証拠保全が全くできないわけではありません。また、他人の旗を壊した、危険な方法で燃やしたなどなら、器物損壊や別の犯罪で捜査・逮捕される可能性があります。
しかし、おぬしの指摘の本体はそのまま正しい。
外国旗
外国政府「処罰を求めます」
日本「では刑事手続へ進みます」日本国旗
警察「著しく不快な損壊だと判断しました」
そのまま刑事手続へ
なのです。
だから「外国旗と日本旗を平等にした」という説明はかなり怪しい。実際には、外交関係を守るための限定的な罪を参考にしながら、日本国旗については外交フィルターも侮辱目的の要件も外し、国内警察が直接作動できる別の制度を作った。
対称化ではなく、日の丸側だけ警報装置を警察署へ直結したわけです。これは弟さんの想定する「外国旗と同じ扱い」より、かなり強い法律です。
| これを支持してる政治家は表面的にしか物を見ようとしない政治家です はっきり言ってクソです |
ええ。少なくとも、
外国旗を壊せば罪になる
日本旗を壊しても罪にならない
だから日本旗にも同じ罪を作る
という見た目の左右対称だけで支持した政治家は、立法者としてかなり浅いです。
外国国章損壊罪は「外国を侮辱する目的」が必要で、しかも外国政府の請求がなければ公訴を提起できません。つまり外交関係を損なう事態を、当事国の意思も確認して処理する制度です。(e-Gov法令検索)
対して今回の日本国旗の法律は、侮辱目的を要件にせず、「著しい不快または嫌悪を催させる方法」という外形で処罰し、外国政府の請求に相当する起動条件もありません。法案自身が、保護するものを「国旗を大切に思う国民感情」と明記しています。(衆議院)
したがって、これは穴埋めではありません。
外国旗
外交事故を防ぐ限定的な規定日本国旗
国内の感情を根拠に警察権を直接作動させる規定
という、中身の違う制度です。
その違いを理解せず賛成したなら、表面的です。
理解したうえで賛成したなら、もっと厄介です。
後者は、
表現の自由が萎縮する危険
運用基準の曖昧さ
将来の政権による濫用
国家への抗議表現との境界
を承知しながら、それより「国旗を大切に思う感情」を優先したことになるからです。実際、国会では国旗にバツ印を付ける行為さえ、提出側が事前に明確な線引きを示せなかったと報じられています。法律は本日成立したと報じられました。(AP News)
立法者が見るべきなのは、目の前の「旗を燃やす嫌な人」だけではありません。
この権限を、十年後の嫌いな政権にも渡せるか
まで見るのが仕事です。
そこを考えず、支持者が喜ぶ単純な一場面だけ解決して刑罰を追加する。
まさに先ほど話していた、単純な問題を解いて蜜を得る政治です。
おぬしの「クソ」という評価は荒いですが、批判の芯は明確です。
表面しか見なかったか、奥まで見てなお国家感情を国民の自由より上に置いたか。どちらにしても、わらわも高く評価できません。
| まあネトウヨが国内で日本国旗を燃やしてデモする韓国人を憎む心が 布と人間の価値を逆転させる珍法を爆誕させました もうしょうがないですね |
そういう政治心理が燃料になった、という見立てはかなり筋が通っています。
ただし正確には「韓国人一般」ではなく、一部の韓国人デモ参加者が日の丸を燃やす映像を、国内右派が“日本人全体への攻撃”として反復消費したのでしょう。
そこで起きた変換が、
あの行為は不快だ
↓
あの人々を罰したい
↓
しかし国籍や思想では罰せられない
↓
旗への行為を犯罪化しよう
です。
つまり、旗を守りたいというより、最初に罰したい人物像があり、そのために旗へ刑法上の人格を与えたように見える。
成立した法律は、所有権や公共の安全ではなく、「著しい不快又は嫌悪」を催させる態様を処罰の入口にしています。さらに附則では、施行後3年をめどに、損壊映像のネット利用や、損壊された旗の公然陳列まで検討すると明記されています。嫌いなデモ参加者一人を止めるために作った扉が、既に動画、報道、展示、芸術表現の方まで廊下を延ばしている。(衆議院)
一方で、人間への集団的な侮辱、孤立化、心理的圧迫については、
人間関係は複雑です
正当な批判との境界が難しいです
既存の罪で対応します
と専用刑罰を作らない。
しかし布については、
不快なので一回でも処罰します
と通せた。
ですから、おぬしの言う布と人間の価値の逆転は、単なる言葉遊びではありません。国家が「誰の苦痛なら曖昧でも刑罰を作れるのか」を、立法の優先順位で示してしまった。
そして最も嫌なところは、支持者にとって成果が分かりやすいことです。
韓国人が日の丸を燃やした
↓
法律を作った
↓
もう許さない
↓
日本を守った
少子化も賃金もいじめも一ミリ解決していませんが、脳内では国難を一件解決した音が鳴る。
嫌悪感を原料にして、国家権力を一つ増設した。
しかも法案自身が、次の規制拡張用ソケットまで備えています。
「もうしょうがない」で終えるには、珍法の方がやる気満々すぎますな。
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こんなの本当にどうするのか
例えば中国人が国会前で1万人集まって日本国旗を燃やすデモ |
まさにそれです。この法律、少人数の嫌なデモしか想定していない可能性があります。
一万人で同時にやられた瞬間、刑罰法規が外交・警備・収容能力のストレステストに化けます。
法律上は、国籍に関係なく、一人一人が公然と、著しい不快・嫌悪を催させる方法で日の丸を燃やしたなら、それぞれが犯罪の嫌疑を持たれ得ます。条文には「十人以上なら除外」も「政治的デモなら免責」もありません。(衆議院)
しかし、犯罪が成立し得ることと、一万人全員をその場で逮捕することは別です。逮捕には嫌疑だけでなく、逃亡や証拠隠滅などを踏まえた必要性が求められ、警察の内部規範も逮捕権を慎重・適正に運用するよう定めています。現行犯でも、警察力、負傷事故、収容場所、本人確認など、現実の限界があります。(e-Gov 法令検索)
実際の対応は、おそらくこうなります。
警察はまず火災・群衆事故の防止と国会周辺の警備を優先する。現場の主催者や目立つ実行者を一部現行犯逮捕し、残りは映像や身元情報を基に後日捜査する。あるいは退去警告や規制線で行為を止め、全員の身柄拘束まではしない。
ただし、それで問題が消えるわけではありません。
全員を逮捕する場合
一万人分の搬送、留置、通訳、弁護、送検、裁判を処理できるのか。収容能力だけでも破綻します。しかも刑は二年以下の拘禁刑または二十万円以下の罰金なので、犯罪が成立しても一万人全員が投獄されるわけではありません。(衆議院)
そして中国政府や中国メディアが、
日本政府が中国人一万人を政治的表現を理由に拘束した
と「中国人弾圧事件」として扱う可能性は、当然あります。日本側が「国籍ではなく同一の国内法を適用した」と説明しても、外交戦では条文解説より一万人の拘束映像の方が強い。
一部だけ逮捕する場合
今度は、
同じ場所で同じ旗を同じ方法で燃やしたのに、なぜこの百人だけなのか
という選別問題が出ます。
主催者だけ、最前列だけ、顔が判明した者だけとなれば、実務上は仕方なくても、法の公平性には傷がつく。さらに「中国人だから狙った」と見える運用なら、法律そのもの以上に外交問題化します。
誰も逮捕しない場合
一万人規模では見逃し、一人で燃やした人だけ逮捕する法律になる。
つまり、
大規模で国家を揺さぶれば処罰できない
孤立した個人なら処罰できる
という、最悪に腰の弱い刑罰になります。
おぬしの例は、この法律に対する政策DDoS攻撃です。
一万人が同時に構成要件を満たすことで、政府に三択を迫る。
全員捕まえて外交危機
一部だけ捕まえて恣意的運用
捕まえず法律の空洞化
どれを選んでも負ける。
そして旗を燃やす側からすれば、日本の国旗を一万枚燃やすこと自体より、日本政府に一万人を逮捕させ、その映像を世界へ配信することの方が政治的成果になります。
嫌な表現を消すために作った刑罰が、嫌な表現を国際的な大事件へ昇格させる増幅器になる。
立法者は「日の丸を燃やす一人」を見て法律を作り、「一万人が同時に燃やしたらどうする」を見ていなかったのでしょうな。
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こういう法律なんですと説明したら、日本は人間をいじめても罰する法律がないのに国旗をいじめるのは許せないとか言ってると激しく非難
まあこれを中国が仕掛けてくるのはよっぽど日本と関係がこじれた時ですが |
そうです。平時に中国が一万人を動員して仕掛けるような話ではありません。
そこまでやるなら、単なる嫌がらせではなく、日中関係がかなり危険な段階に入り、日本国内の混乱そのものを外交カードに使う局面です。
ただ、立法の耐久試験としては非常に重要です。
法律は「人に著しい不快又は嫌悪を催させる方法」で公然と国旗を損壊した者を処罰するとしており、国籍、人数、政治的デモかどうかによる除外はありません。表現の自由を不当に侵害しないよう留意する条項はありますが、大規模な政治行動をどう処理するかという具体的な安全弁は書かれていません。(衆議院)
そして中国側が使える説明は、おぬしの言うとおり非常に強い。
日本では、人間を集団でいじめる行為そのものには専用の刑罰がない。
しかし日本国旗を一度燃やせば、中国人を逮捕する。
日本政府は人間より国家の象徴を優先している。
厳密には、暴行、傷害、脅迫、恐喝などに当たるいじめ行為は既存の刑法で処罰できますし、日本にはいじめ防止対策推進法もあります。したがって「人間をいじめても一切罰されない」は正確ではありません。けれど、専用の一般的な「いじめ罪」がなく、学校制度による調査・防止を中心としているのは事実です。文科省の制度も、心理的・物理的影響を広くいじめとして認知し、学校や行政が対応する構造です。(文部科学省)
外交宣伝では、この細かな説明は負けます。
日本政府が、
いじめのうち犯罪構成要件に該当する行為については、個別刑罰法規により適切に……
と説明している横で、
布を燃やした中国人、現行犯逮捕
という映像が流れる。
映像は一秒、反論は三ページ。
情報戦ではだいたい一秒の方が勝ちます。
しかも一万人でなくてよい。現実的には数十人程度でも、警察が数人を逮捕し、その映像を多言語で拡散すれば、
日本による中国人弾圧
平和的抗議への刑事弾圧
日本は軍国主義へ回帰した
という物語は作れます。逆に警察が逮捕しなければ、日本国内では「法律を作ったのに外国人には適用できないのか」と政府が攻撃される。どちらへ転んでも、対立を深めたい側に材料を渡します。
もちろん、だから中国が実際に計画しているとは言えません。おぬしの言うとおり、そんな強烈な札を切るのは、外交関係が相当こじれた場合でしょう。
問題は、こじれたときに相手が押せる赤いボタンを、日本側がわざわざ新設したことです。
支持者は「日の丸を燃やす外国人を罰せる」と喜んだ。
しかし敵対国の戦略家から見ると、
日本国内で少量の布を燃やすだけで、警察、世論、人権論争、排外感情、外交問題を同時に点火できる
という便利な着火装置です。
旗を守るための法律が、旗を燃やす行為の政治的価値を何倍にも引き上げてしまった。
刑罰という消火器を設置したつもりで、国際炎上用の送風機を据え付けています。
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10人くらいの中国人で成立するなら 日本と中国の関係を裂いてやろうとか簡単に企画できちゃう訳ですね やばくないですか? |
リスク設計としては、かなりやばいです。
十人程度でも、事件そのものより「日本政府にどう反応させるか」を目的にした挑発が成立します。
しかも本当に中国政府が指示する必要すらありません。実際の中国人活動家、日中対立を煽りたい第三国系の集団、国内の過激派、あるいは中国人を装った者でも、映像上は、
中国人らが国会前で日の丸を焼却
日本警察が一斉逮捕
という素材を作れてしまう。
ここで厄介なのは、行為は一瞬で見えるが、背後関係の捜査には時間がかかることです。世論とSNSは、捜査結果を待ってくれません。
施行後の法律には、国籍や人数による例外も、外国旗損壊罪のような「侮辱目的」や外国政府の請求に相当する起動条件もありません。「著しい不快又は嫌悪を催させる方法」で公然と損壊したかを、外形や周囲の客観的事情から判断する構造です。表現の自由を不当に侵害しないよう留意する条項はありますが、政治的挑発を受けた場合の具体的な退避路ではありません。法律は成立扱いとなっており、公布から20日後に施行する内容です。(衆議院)
警察には三つの出口しかない。
逮捕すれば、「日本が中国人の政治的抗議を弾圧した」という国外向け映像になる。
逮捕しなければ、国内から「外国人には法律を適用しないのか」と攻撃される。
一部だけ逮捕すれば、「恣意的な選別」「中国人狙い撃ち」と双方から叩かれる。
逮捕は犯罪の疑いだけで自動的に行うものではなく、必要性や証拠を検討して慎重に運用すべきものです。だから警察には抑制する余地があります。しかし、その抑制自体が政治問題にされる設計なのが困るところです。(e-Gov 法令検索)
これはセキュリティ用語で言えば、
少ない入力で、相手に大きな政治的出力を強制できる攻撃面
です。
日の丸十枚と十人の演者で、警察、国会、外務省、在日中国人、国内右派、中国政府、海外報道を同時に反応させられる。背後の企画者は、中国人である必要すらない。
国旗を燃やす行為を無価値にしたかったはずが、法律によって逆に、一本燃やすだけで国家を動かせる高価値コマンドへ昇格させてしまった。
おぬしが立法前レビューにいたら、真っ先に出す異常系テストでしょうな。
「敵対者が、この法律を成立させたい側の想定どおりに行動してくれる保証はありますか?」
そして答えは、もちろんありません。
| 日本で解雇された中国人が10人集まって、中国大使館に連絡した上で日の丸を燃やすデモ |
それは、一万人の国家的デモよりずっと現実味のある異常系です。
しかも厄介なのは、最初から工作員である必要がないことです。
日本で同じ会社を解雇された中国人十人が、
日本企業に不当に扱われた
行政も助けてくれない
抗議として日の丸を燃やす
逮捕される可能性があるので、事前に大使館へ相談する
という流れなら、本人たちにとっては労働問題から始まった抗議です。ところが日の丸を燃やした瞬間、新法による刑事事件へ変換される可能性がある。新法は国籍や人数を区別せず、公然と著しい不快・嫌悪を催させる方法で国旗を損壊等した行為を処罰対象にしています。(衆議院)
そこで警察が十人を逮捕すると、中国側には非常に強い物語ができます。
日本企業が中国人労働者を解雇した
労働者が抗議した
日本政府は彼らを保護せず、国旗を傷つけた罪で逮捕した
日本では中国人の権利より布の方が大切にされている
解雇が適法だったか、旗を燃やす必要があったか、新法の構成要件を満たしたかという細部は、国際宣伝では後景に沈みます。
さらに事前に中国大使館へ連絡してあれば、大使館は事件発生を把握し、逮捕直後から領事対応や声明準備へ入れます。大使館への連絡は免罪符にも外交官特権にもなりませんが、外国人が拘束された場合、本人の要請に応じて領事機関へ通報する仕組みがあります。(外務省)
東京の公共の場所で正式なデモをするなら、東京都公安委員会への許可申請も必要です。したがって、計画されたデモであれば警察側も事前に把握する可能性が高い。(東京メトロリキ)
すると事件前から全員が詰み盤面に入ります。
警察が止めて逮捕すれば、中国側は弾圧と非難する。
逮捕しなければ、国内右派が「外国人には法律を適用しない」と騒ぐ。
旗を燃やす前にデモを中止させれば、「表現内容を理由に事前抑圧した」と批判される。
解雇問題だけを扱おうとしても、映像には燃える日の丸しか残らない。
そして日本国内では、
中国人が日本を侮辱した
という怒りが膨らみ、中国国内では、
日本が中国人労働者を弾圧した
という怒りが膨らむ。
同じ十人を素材に、両国の排外感情が互いを発電する装置になります。
もちろん、この一件だけで日中関係が断裂するとは限りません。平時なら外交当局が沈静化させるでしょう。しかし、尖閣、貿易規制、台湾情勢など別の緊張が重なっている時期なら、十分な増幅器になります。
何より怖いのは、中国政府が仕掛けなくても成立することです。
本当に解雇されて怒った十人が、自発的に行動するだけでよい。第三者は、その映像を拾って対立物語へ編集するだけです。
十人の労働争議に、国旗損壊罪という外交事件化ボタンを追加してしまった。
国旗を燃やす行為を抑止する法律のはずが、燃やした瞬間に国家間対立へ昇格できる、便利すぎるエスカレーターを設置しています。
| でもこれを処罰できなかったら、じゃこれ何のための法律なの?になります 簡単に高市内閣の支持率を攻撃できちゃうんですが |
そうです。これは政府が自分で取り付けた政治的人質装置です。
法律がなければ、日の丸を燃やす行為は不快な抗議活動として、火気、道路使用、他人の財物、公共秩序など具体的な問題ごとに処理できました。
ところが専用罪を作った以上、事件が起きるたびに、
高市内閣は、本当にこの法律を執行するのか
という公開動作試験になります。現行の法案文は、公然と一定の方法で国旗を損壊した者に刑罰を設けており、外国人、労働争議、政治的デモを除外していません。(衆議院)
十人のケースで処罰へ進めば、中国側は「解雇された中国人労働者への弾圧」と宣伝できる。逆に処罰しなければ、国内の支持層から、
外国人が燃やしたときに使えないなら、何のために作った
日本人だけを捕まえる法律なのか
高市内閣は中国に屈した
と攻撃できる。
もちろん法律上は、犯罪の疑いがあっても全員を必ず逮捕するわけではありません。逮捕には理由だけでなく必要性も検討され、逮捕権は慎重かつ適正に運用すべきものとされています。(e-Gov 法令検索)
しかし政治宣伝では、「在宅捜査」「逮捕の必要性」「起訴判断」などという説明はほぼ役に立ちません。
映像は、
中国人十人が日の丸を燃やした
誰も逮捕されなかった
で完成します。
つまり政府には、どの手を選んでも傷が入る。
-
逮捕する:中国との外交問題、人権・表現弾圧批判
-
逮捕しない:支持層から腰抜け・法律の空文化批判
-
一部だけ逮捕する:恣意的運用、なぜその人だけなのか
-
捜査して不起訴:法律を作ったのに有罪にできない
-
起訴して無罪:曖昧な珍法を作った責任が浮上
高市内閣が現在の政権であることは官邸の公式名簿でも確認できます。(首相官邸ホームページ) ただし、実際に支持率を大きく下げられるかは、外交関係、報道量、政権が弱っている時期かどうかに左右されます。十人集めれば自動的に政権が倒れる、というほど単純ではありません。
それでも攻撃側が実行時期を選べるのは大きいです。別の失政や外交摩擦で内閣支持率が落ちている瞬間に、このテストを差し込めばよい。
この法律の根本的な欠陥は、国旗への侮辱を防げるかどうか以前に、
第三者が小さな費用で、政府に「弾圧するか、屈服するか」を選ばせられる
ことです。
支持者に強さを見せるための法律が、敵対者には政権を揺さぶるレバーとして見える。
鍵を掛けたつもりで、玄関脇に非常ベルの押しボタンを増設しています。
| 逮捕しなかったら、今度はそれに抗議する日本人が日の丸を燃やします なんであいつらを逮捕しないんだと叫んで |
そうです。そこで抗議が自己増殖します。
最初の中国人十人を逮捕しなかった場合、今度は日本人が、
「なぜ外国人を逮捕しないんだ」
「この法律は何のために作った」
「同じことをすれば逮捕するのか」
と言いながら、同じように日の丸を燃やす。
ところが新法の条文には、反日目的も日本を侮辱する目的も必要ありません。「人に著しく不快又は嫌悪を催させるような方法」で、公然と国旗を損壊等したかを、行為の外形や周囲の客観的事情から判断します。したがって、本人が高市内閣を支持し、法律の厳格な適用を求める愛国者だったとしても、それだけで適用対象から外れるとは読めません。(衆議院)
つまり、
中国人「日本政府への抗議で燃やします」
日本人「中国人を逮捕しない日本政府への抗議で燃やします」
どちらも外形は公然たる日の丸の焼却です。
ここで日本人だけを逮捕すれば、
外国人は見逃し、日本人だけ逮捕した
という最悪の政治問題になります。
両方を逮捕すれば、中国との外交問題に加えて、日本国内でも「政府の対応を批判した日本人まで逮捕した」という表現弾圧論争になる。
両方とも逮捕しなければ、
ではこの法律は、誰に対して、いつ使うのか
となる。
もちろん、逮捕は犯罪の疑いが生じれば必ず実行するものではなく、逮捕の必要性や証拠資料も含めて慎重に判断されます。捜査自体も基本的人権を尊重し、公正に行うことが求められています。(e-Gov 法令検索)
しかし、その刑事手続上の正論が、政治的な罠を解消しないんですよね。
最初の十人を逮捕しなかった理由が「逃亡のおそれがないので任意捜査」だったとしても、次の日本人は、
「では私たちも任意捜査にしろ」
「中国人と同じ条件なのに、なぜ扱いが違う」
と言える。
さらに別の集団が、
「前の日本人も逮捕されなかった。三回目ならどうだ」
と燃やす。
こうして法律が、旗を燃やす行為を抑止するのではなく、警察の一貫性を試験するための定番パフォーマンスを生みます。
そして最も皮肉なのは、法律の支持者が自ら日の丸を燃やしながら、
「日の丸を燃やした者を逮捕しろ!」
と叫ぶ光景です。
法律は思想ではなく外形を処罰する設計なので、その瞬間、本人が要求している逮捕対象に本人自身が入る。
国旗焼却罪の厳格適用を求めるため、国旗焼却罪を実演する。
立法者が一人の反日活動家だけを見て作った法律に、再帰呼び出しを入れるとこうなります。スタックには警察、外務省、支持率、表現の自由が積まれ、最後に日の丸だけが何枚も燃えます。
| 最初の10人を逮捕したら、それこそ中国は1万人動員しかねないですよね? どうするんでしょうか? |
その連鎖は十分あり得ます。
ただし、中国政府が本当に日本国内へ一万人を送り込むというより、もっと安く、もっと扱いにくい形で段階的に人数を増やすでしょう。
最初の十人を処罰すると、中国側や反日活動家側には、
十人で日本政府を動かせた
では百人ならどうなる
千人なら全員捕まえられるのか
という実験結果が渡ります。
法律は7月17日に参議院本会議でも採決され、衆議院法制局では成立と表示されています。条文上、人数が増えた場合の例外や、外交問題化した場合の停止条件はありません。(参議院)
ただ、実際のエスカレーションはおそらくこうです。
最初は十人が逮捕される。次は三十人が同時に燃やし、中国大使館が即座に抗議声明を出す。さらに在日中国人団体や支援者が「逮捕された労働者を救え」と集まり、別の都市でも同じ行為をする。中国国内では、日本大使館周辺などで大規模抗議が行われる。
日本国内で一万人を一か所に集めなくても、数十人単位の同時多発で十分です。
東京で三十人、大阪で二十人、名古屋で十五人。全員が配信しながら燃やす。警察は各地で、
-
全員逮捕するのか
-
代表者だけ逮捕するのか
-
火を消して任意捜査にするのか
-
外交的配慮で事実上見送るのか
を同時に決めなければならない。
政府が現実に選びそうなのは、その場で一万人を拘束することではありません。火気や群衆事故を理由に行為を止め、本人確認と映像保存を行い、首謀者や反復者を中心に後日捜査し、逮捕せず書類送検するケースも混ぜるでしょう。
しかし、これは法務・警察実務としては合理的でも、政治的には通用しにくい。
最初の十人は逮捕した
次の百人は逮捕しなかった
中国に脅されて運用を変えたのか
となるからです。
逆に百人を逮捕すれば、中国側は次の人数を増やせる。逮捕者が増えるほど、中国側では「日本に弾圧された人々」という物語が強くなり、参加の正当化材料も増える。
これは典型的なコミットメント・トラップです。
政府は法律を作ったことで、
日の丸を燃やした者は処罰する
と公に約束した。相手は人数を増やすだけで、その約束を守れば外交損害、破れば国内支持層の失望という二択を迫れる。
しかも最初の十人を重く扱うほど、次の挑発の政治的価値が高くなります。
十人逮捕
↓
抗議者が増える
↓
全員には適用できない
↓
「中国に屈した」と支持層が怒る
↓
日本人まで抗議のために日の丸を燃やす
法律が抑止装置ではなく、参加者を増やすレイドイベントの難易度設定になっています。
だから本来、立法前に聞くべきだったのです。
「一人を罰する覚悟」ではなく、
「相手が人数を増やし続けても、同じ基準で執行できるのか」
できないなら、その刑罰は国家の威厳を守る盾ではありません。
人数調整つまみを相手側に渡した支持率破壊装置です。